メディカルスタッフ専門基礎科目シリーズリハビリテーション医学

著者:新潟医療福祉大学 教授 真柄 彰 東京医療学院大学 前教授 鴨下 博 
分野:コメディカル
ページ数:330
判型:B5
ISBN:978-4-8446-0869-1
定価:本体 5,000円 + 税
この50年間リハビリテーション(以後リハと略す)医学の進歩は著しく、診療対象と内容は劇的に変化した。その結果、リハ医療の守備範囲は拡大し続け、リハの需要に対し供給は、セラピストの養成学校が増加、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士も毎年多くの学生が卒業している。セラピストが増加したことによりリハ医療は量だけでなく質も確実に向上している。
編者の一人真柄は、医学部卒業後臨床現場においてリハ医として障害者のリハに携わってきた。総合病院整形外科での研修、エモリー大学、ロイヤルパースリハ病院での研修、25年間労災病院で臨床経験を積み、その後現在は、セラピスト養成大学でリハ医学の講義と指導を行っている。もう一人の編者鴨下は真柄と大学は異なるが、卒業年次は同じで、医学部卒業後市中の病院でリハ医療に携わり、一時期ではあるがセラピスト養成の大学でリハ医学の講義と指導を行い、現在は回復期病棟を持つ病院でリハ医療に携わっている。
編者らは、共にリハの研鑽を積んできた。この間早期リハが導入され、かつて行われてきたような関節拘縮などに対する整形外科的治療は激減、関節リウマチにおいては治療法が進歩しリハのアプローチも変化している。一方、高齢化社会は、高齢者のリハが喫緊の課題となった。このような社会情勢においてがんリハ、呼吸器リハ、摂食嚥下障害のリハの需要は高まり、さらに開腹、開胸術前術後のリハ、循環器のリハ等が急速に展開されるようになった。脳卒中は急性期治療が進歩し、成人病対策の結果発症は減少している。しかし、高齢者の脳卒中は増加しており、介護の主要因であり、リハの中心的課題である。若年者の事故による四肢切断は減少しているが、糖尿病、閉塞性動脈硬化症による切断は増加し、それに対し義肢装具の開発は目覚ましいものがある。
医療政策も激変し平均在院日数は短縮し続けており、回復期リハ病棟における早期リハビリテーション受け入れの期待は高まっている。脊髄損傷はiPS細胞による再生医療も期待されているが、社会参加までには長い期間を要し、リハ医療の期間が制限され総合的なリハビリテーションを受け入れ実施できる施設がないなど、社会問題になっている。しかし、脊髄損傷から始まったパラリンピックは、普遍的な障がい者スポーツとして障がい者のQOLを高め、少数者の社会参加を受け入れる環境改善をもたらしている。このようにリハビリテーション医療は、著しく変貌している。
リハビリテーション医療の目的は、障害を受けたひとが健常者にまけずに目的を持って、楽しく生きていけることをサポートすることである。そのためには機能訓練はもとより、本人だけではなく家族、そして社会をも含めた障害の受容、生活環境へのアプローチも大切である。チームアプローチがもっとも重要な分野であり、セラピストはこの心構えと技術が必要である。多職種間の共通言語として各種評価の標準化もすすみ、これを理解し実行することはリハ専門スタッフになるために欠かせない。
編者らは当初教科書「リハビリテーション概論」と「リハビリテーション医学」を一冊の教科書として構想したが、リハ医学の進歩を取り入れた結果分冊となった。「リハビリテーション概論」は、リハビリテーションの素晴らしさを理解する入門編である。それに対し「リハビリテーション医学」は、疾患別リハとして編集した。リハ医学の進歩に合わせた領域も加えた。「リハビリテーション概論」と「リハビリテーション医学」は姉妹編である。これら2冊を併せて使っていただけるように効率的な編集を心がけた。各章ともその分野で活躍されている先生に執筆をお願いしている。そして、学生のセルフアセスメントとして各章に問題を用意した。
学生がリハを技術に終わらせることなく障がい者の全人間的復権を目指して総合的リハを考え実践するセラピストになるのに、些かでも役に立てれば望外の幸せである。
目次正誤表追加情報
第1章 脳卒中・頭部外傷のリハビリテーション/1
1 脳卒中、頭部外傷のリハビリテーション評価/2
 1.1 評価内容/2
 1.2 帰結予測/4
2 時期・障害レベルごとのアプローチ/4
 2.1 時期別の脳卒中・頭部外傷のリハビリテーション/4
 2.2 機能障害へのアプローチ/6
 2.3 機能障害・能力低下へのアプローチ/7
 2.4 能力低下へのアプローチ/8
 2.5 社会的不利へのアプローチ/10
問 題/10
第2章 摂食・嚥下のリハビリテーション/15
1 摂食嚥下障害/16
 1.1 摂食嚥下機能の加齢変化/16
2 摂食嚥下機能評価/18
 2.1 摂食嚥下機能評価/18
 2.2 スクリーニング検査/18
 2.3 食事場面の評価/20
 2.4 嚥下内視鏡検査/20
 2.5 嚥下造影検査/22
 2.6 筋電図検査/22
 2.7 舌圧検査/24
 2.8 マノメトリ/24
 2.9 その他/24
3 摂食嚥下リハビリテーション/25
 3.1 摂食嚥下リハビリテーションの戦略/25
 3.2 口腔ケア/26
 3.3 歯科的対応/26
 3.4 間接訓練/28
 3.5 直接訓練/30
 3.6 チームアプローチ/31
問 題/32
第3章 脊髄損傷のリハビリテーション/37
1 脊髄損傷の評価と予後予測/38
 1.1 機能障害の評価/38
 1.2 脊髄損傷の予後予測/38
2 急性期の合併症とその医学的管理について/41 
 2.1 呼吸器合併症とその管理について/42 
 2.2 循環器合併症とその管理について/42 
 2.3 その他の合併症とその管理について/44 
3 慢性期にかけての合併症とその医学的管理について/44
 3.1 循環系の合併症/44
 3.2 呼吸器系の合併症/46
 3.3 尿路系の合併症/46
 3.4 性機能障害/48
 3.5 消化器系の合併症/48
 3.6 骨代謝系の合併症/49
 3.7 褥瘡/50
 3.8 痙縮/50
 3.9 疼痛/51 
 3.10 脊髄空洞症/52 
 3.11 心理・精神の合併症/52
 3.12 体温調節障害/52
問 題/53
第4章 障がい者スポーツ/57
1 障がい者のスポーツ/58
 1.1 障がい者スポーツは特別ではない/58
 1.2 脊髄損傷のリハビリテーションとスポーツ/59
 1.3 パラリンピックとは/60
 1.4 障がい者にとってのスポーツの効果/60
 1.5 脊髄損傷者のスポーツにおける特異的留意点とスポーツ外傷/64
2 障がい者のスポーツの実際/65
 2.1 全国障害者スポーツ大会/65
 2.2 パラリンピックスポーツ/66
 2.3 Classification/67
 2.4 スポーツ用車いすとスポーツ用義肢装具/68
問 題/71
第5章 中枢性疾患のリハビリテーション/75
1 パーキンソン病/76
 1.1 疾患の概要/76
 1.2 症候/78
 1.3 診断/80
 1.4 評価/80
 1.5 治療/81
2 脊髄小脳変性症/82
 2.1 疾患の概要/82
 2.2 症候/83
 2.3 診断/84
 2.4 評価/84
 2.5 治療/85
3 筋萎縮性側索硬化症/90
 3.1 疾患の概要/90
 3.2 症候/90
 3.3 診断/90
 3.4 評価/91
 3.5 治療/91
4 多発性硬化症/93
 4.1 疾患の概要と経過/93
 4.2 原因と症状/93
 4.3 視神経脊髄炎とは/93
 4.4 診断/94
 4.5 評価/94
 4.6 治療/94
問 題/95
第6章 末梢神経疾患のリハビリテーション/99
1 末梢神経障害とは/100
 1.1 末梢神経の構造/100
 1.2 末梢神経障害のタイプ/101
 1.3 末梢神経損傷の分類/101 
 1.4 末梢神経の再生、再支配/102 
 1.5 末梢神経障害の評価/103
 1.6 過用性筋力低下/103
2 代表的な末梢神経障害/104
 2.1 絞扼性末梢神経障害/104
 2.2 腕神経叢麻痺/110
 2.3 ギラン・バレー症候群/112
 2.4 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎/112
 2.5 シャルコー・マリー・トゥース病/113
 2.6 ポストポリオ症候群/114
問 題/116
第7章 筋疾患のリハビリテーション/119
1 筋疾患(ミオパチー)/120
 1.1 筋ジストロフィー/120
2 Duchenne型筋ジストロフィーのリハビリテーション/125
 2.1 歩行可能時期(機能障害度ステージⅠ~Ⅳ)/126
 2.2 車いす時期(機能障害度ステージⅤ~Ⅶ)/126
 2.3 呼吸管理が必要となる時期(機能障害度ステージⅧ)/128
問 題/129
第8章 小児のリハビリテーション/133
1 脳性麻痺/134
 1.1 脳性麻痺とは/134
 1.2 脳性麻痺の障害と評価/134
 1.3 脳性麻痺の治療とリハビリテーション/136
2 二分脊椎/138
 2.1 二分脊椎とは/138
 2.2 二分脊椎の障害と評価/138
 2.3 二分脊椎の治療とリハビリテーション/140
問 題/142
第9章 循環器疾患のリハビリテーション/145
1 心臓リハビリテーション/146
 1.1 対象疾患/146
 1.2心臓リハビリテーションプログラム/146 
 1.3 運動療法/148
 1.4 心臓リハビリテーションの効果/150
2 運動プログラムの安全性/152
3 心不全のリハビリテーション/152
問 題/153
第10章 内部障害のリハビリテーション/157
1 呼吸器疾患/158
 1.1 リハ対象疾患・適応・禁忌/158
 1.2 科学的エビデンス/160
 1.3 リハの実際と中止基準/160
2 糖尿病/160
 2.1 糖尿病のもたらす障害/160
 2.2 糖尿病治療の注意点/162
 2.3 糖尿病の運動療法の実際と注意点/163
3 慢性腎臓病(CKD)/164
 3.1 CKD患者と運動耐容能/164
 3.2 腎臓リハとは/164
 3.3 リハビリテーションの内容/166
 3.4 リハで生命予後の延長も可能/168
問 題/170
第11章 関節リウマチのリハビリテーション/175
1 関節リウマチの主要症候/176
2 診断と検査、評価/176
 2.1 診断と検査/176
 2.2 評価/178
3 治療体系-トータルマネジメント/178
4 薬物療法/178
 4.1 治療計画-目標達成に向けた治療(T2T)/178
 4.2 治療ガイドライン/179
 4.3 治療薬/180
5 手術療法/182
 5.1 手術適応/182
 5.2 手術の種類/182
6 リハビリテーション/184
 6.1 リハビリテーションの概念/184
 6.2 リハビリテーション手段/186
問 題/188
第12章 切断のリハビリテーション/191
1 切断原因の変遷と動向/192
2 義足/194
 2.1 義足の役割と構造/194
 2.2 義足のリハビリテーション成功率/194
 2.3 切断者のリハビリ前評価/194
 2.4 断端ケア(stump care)/196
 2.5 断端ケアの実際/196
 2.6 義足の処方/198
 2.7 義足訓練の実際/201
3 義手/203
 3.1 義手の役割と構造、分類/203
 3.2 義手使用の現状/204
 3.3 切断者のリハビリ前評価/204
 3.4 断端ケア/205
 3.5 義手の処方と訓練の実際/205
問 題/212
第13章 運動器疾患のリハビリテーション/217
1 骨折のリハビリテーション/218
 1.1 骨折の分類/218
 1.2 骨折の治療/221
 1.3 骨折の合併症/224
2 変形性関節症/226
 2.1 変形性股関節症/226
 2.2 変形性膝関節症/230
3 捻挫・靭帯損傷/234
 3.1 アキレス腱断裂/234
 3.2 足関節捻挫/235
 3.3 膝前十字靭帯損傷/235
 3.4 膝後十字靭帯損傷/236
問 題/237
第14章 装具療法/241
1 装具/242
 1.1 装具とは/242 
2 上肢装具/243
 2.1 上肢装具の目的/243
 2.2 上肢装具の種類/244
 2.3 上肢装具の処方・製作における留意点/246
3 下肢装具/248
 3.1 下肢装具の目的/248
 3.2 下肢装具の種類/248
 3.3 下肢装具の構造/250
 3.4 下肢装具の処方・製作における留意点/252
4 体幹装具/252
 4.1 体幹装具の目的/252
 4.2 体幹装具の種類/253
 4.3 体幹装具の構造/256
 4.4 体幹装具の処方・製作における留意点/256
問 題/257
第15章 悪性腫瘍(がん)のリハビリテーション/261
1 悪性腫瘍(がん)の基礎的理解/262
 1.1 概念/262
 1.2 種類/263
 1.3 がんの病態/263
 1.4 がん治療/264
 1.5 がん治療の効果判定/265
2 身体機能評価/265
 2.1 ECOG のPerformance Status Scale(PS)/265
 2.2 Karnofsy Performance Scale (KPS)/266
 2.3 Cancer Fnctional Assessment Set (cFAS)/267
3 対象となる障害/268
4 病期別のリハビリテーション/268
 4.1 病期による分類/268
 4.2 周術期/268
 4.3 放射線や化学療法中・後/268
 4.4 終末期/270
5.原発巣別のリハビリテーション/270
 5.1 脳腫瘍(脳転移)/270
 5.2 脊髄腫瘍(脊髄・脊椎転移、髄膜播種)/270
 5.3 頭頸部がん/271
 5.4 開胸・開腹術(肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんなど)/271
 5.5 乳がん/272
 5.6 骨・軟部腫瘍術後(患肢温存術後、四肢切断術後)/272
 5.7 リンパ浮腫/272
 5.8 造血幹細胞移植/272
 5.9 骨転移/273
問 題/274
第16章 熱傷のリハビリテーション/277
1 熱傷の基礎的理解/278
 1.1 病期/278
 1.2 熱傷の診断/278
 1.3 重症度の判定/280
 1.4 熱傷治療の概要/282
2 熱傷のリハビリテーションの実際/283
 2.1 浮腫/283
 2.2 褥瘡/283
 2.3 肥厚性瘢痕、瘢痕ケロイド/283
 2.4 瘢痕拘縮、関節拘縮/284
 2.5 筋力低下/286
2.6 全身体力、ADL、社会復帰/287
問 題/288
付 録 参考資料/291
1 髄節神経根支配皮膚分節図前面/292
2 髄節神経根支配皮膚分節図後面/293
3 末梢神経支配皮膚分節図前面/294
4 末梢神経支配皮膚分節図後面/295
5 関節可動域表示ならびに測定法/296
6 英語版ASIA/ISCoS分類表/302
【問題解答と解説】/303
索 引/319
現在お知らせするものはありません。
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