メディカルスタッフ専門基礎科目シリーズ精神医学

著者:名古屋大学大学院医学系研究科 教授 飯高哲也
分野:コメディカル
ページ数:470
判型:B5
ISBN:978-4-8446-0877-6
定価:本体 5,400円 + 税
 最近20年ほどの間で、精神疾患に対するわれわれの見方は劇的に変化している。以前は一部の人々の病気と考えられていた精神疾患は、今では日本人のほとんどが罹患しうる病気となった。そのため厚生労働省は2011年に、それまでの4大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)に精神疾患を加え、これら5大疾病に対して広範かつ継続的な医療を提供することを定めた。このような状況で精神医療の場も変革の時を迎え、入院主体の医療から通院と社会復帰へ向けて大きく舵を取る必要があった。病棟から外来へ、さらに社会的スキルの獲得や認知リハビリテーションなどを含め、多職種の密接な連携が求められる時代になったのである。
 今まではそれぞれの職種で異なった言葉の用法や、独自の疾患・治療モデルを持っていることが少なくなかった。しかしこれから精神医療に携わる人々の間では、同じ言葉と疾患モデルを持って互いに協力していかねばならない。本教科書は作業療法士や理学療法士をめざす学生はもとより、広く臨床精神医学を学ぼうとする人々を対象として編集された。とりわけ診断基準は最新のDSM-5により統一され、他の診断体系との比較表が添付されている。ぜひ多くのメディカル・スタッフにも目を通していただき、共通の理解と認識を持って患者の社会復帰に向けて歩んでいきたいと思う。
 私自身は大学教員として、学生に既存の教科書を用いて臨床精神医学を教えてきた。その中で自分の考えと教科書に若干の相違があり、また診断基準や医学用語などにも改訂の余地があると感じていた。このような問題点を解消できないかと思っていたところ、2016年晩秋に出版社から依頼を受け、本書の編集に着手することになった。最初は自分には荷が重いと感じたが、名古屋大学の優秀な人材と共同して徐々に執筆と編集を進めることができた。本書は第一線の臨床医学者の豊富な知識と経験に基づいており、職種を超えて精神疾患を理解するために最適な内容を含んでいる。その初版を上梓できたことは、編集者として歓喜の念もひとしおである。
 執筆者のほとんどは名古屋大学大学院医学系研究科・精神医学および親と子どもの心療学に在籍していたか、または何らかの形でその臨床・教育・研究に関与していた方々である。従って内容に関しては、類似の教科書と比べて統一性のとれたものになっていると自負している。また作業療法士国家試験問題とその解答例が、本書の末尾に収録されているので参考にされたい。
 
 
目次正誤表追加情報
第1章 精神症状の診かた    2 
 1 総論  2  
  1.1 精神症状とは何か  2
  1.2 予診と初診さらに初期治療 4
  1.3 共感性と感情伝染 5
  1.4 発達過程の確認 8
  1.5 聞き方と話し方 9
  1.6 診断と分類 11
  1.7 精神医療の歴史 15
 2 各論     17
  2.1 意識 17
  2.2 運動 18
  2.3 知覚 19
 2.4 注意 20
  2.5 記憶 21
  2.6 言語 22
  2.7 学習 22
  2.8 知能 23
  2.9 思考 23
  2.10 意志と欲動 26
  2.11 感情と気分 28
  2.12 不安と恐怖症 30
  2.13 自我意識 31
  2.14 社会的認知 32
  2.15 パーソナリティ 33
第2章 診断と検査   35
 1 診断 36
  1.1 精神科診断面接 36
  1.2 身体的診察 39
  1.3 診断基準 39
  1.4 構造化面接  41
  1.5 精神症状評価尺度 41
 2 検査 43
  2.1 臨床化学検査 44
  2.2 毒物検査 45
  2.3 脳脊髄液検査 45
  2.4 脳波検査 45
  2.5 神経画像検査 49
  2.6 知能検査 52
  2.7 神経心理学的検査 53
  2.8 人格検査 60
第3章 統合失調症  65
 1 統合失調症とは 66
  1.1 概念・定義  66
  1.2 歴史的背景 66
  1.3 疫学 68
  1.4 成因と機序 68
  1.5 症状 72
  1.6 症状評価 75
  1.7 病識について 75
 2 診断・分類・亜型 76     
  2.1 診断 76
  2.2 分類 76
  2.3 統合失調症の亜型 78
 3 経過と予後 80
  3.1 経過 80
  3.2 予後 82
 4 治療 84
  4.1 薬物治療 84
  4.2 再発予防 85
  4.3 非定型抗精神病薬について 85
  4.4 抗精神病薬の副作用 86
  4.5 電気痙攣療法 86
  4.6 心理教育 87
  4.7 家族教育 87
  4.8 認知行動療法 87
  4.9 社会療法(社会復帰のための治療法) 88
  4.10 その他 89
第4章 うつ病・双極性障害   91
 1 うつ病・双極性障害とは 92
 2 基本的な症候~①抑うつエピソード 93
 3 基本的な症候~②躁病エピソード 97
 4 基本的な症候~③軽躁病エピソード 100
 5 抑うつ障害の診断と特徴について 102
  5.1 うつ病 102
  5.2 持続性抑うつ障害 104
  5.3 医薬品・物質誘発性抑うつ障害 105
  5.4 身体疾患による抑うつ障害 106
  5.5 月経前不快気分障害 107
  5.6 重篤気分調節症 107
  5.7 他の特定される抑うつ障害 108
 6 双極性障害の診断と特徴について 108
  6.1 双極Ⅰ型障害 109
  6.2 双極Ⅱ型障害 109
  6.3 気分循環性障害 109
  6.4 他の特定される双極性障害および関連障害 109
  6.5 物質・医薬品誘発性双極性障害および関連障害 111
  6.6 身体疾患による双極性障害および関連障害     112    
 7 うつ病・双極性障害に関連する臨床的特徴 112
  7.1 混合状態 112
  7.2 不安による苦痛 113
  7.3 精神病症状 113
  7.4 周産期の発症 114
  7.5 季節性 114
  7.6 急速交代型 115
  7.7 メランコリア 115
  7.8 非定型うつ病 115
 8 疫学 116
  8.1 頻度(有病率) 116
  8.2 年齢による頻度の差 116
  8.3 うつ病と双極性障害の頻度の性差 116
  8.4 他の精神障害との併存 116
  8.5 身体疾患との併存 117
  8.6 発症危険因子:遺伝的要素 118
 9 経過・予後 118
  9.1 うつ病 118
  9.2 双極性障害 119
  9.3 自殺リスク 119
10 治療 120
  10.1 治療場面の選択 120
  10.2 治療の原則 120
  10.3 うつ病の治療 121
  10.4 双極性障害の治療 123
  10.5 うつ病・双極性障害の リハビリテーション: リワークプログラム 123
 11 おわりに 124
第5章 不安症・強迫症・心的外傷後ストレス障害 127
 1 はじめに          128                                          
2 概念・定義 128
 3 疫学 130
 4 成因と機序 130
 5 臨床症状 130
  5.1 限局性恐怖症の臨床症状 131
  5.2 社交不安症の臨床症状 132
  5.3 パニック症の臨床症状 133
  5.4 全般不安症の臨床症状 135
  5.5 強迫症の臨床症状    136
  5.6 心的外傷後ストレス障害の臨床症状        137          
  5.7 複雑性心的外傷後ストレス障害の臨床症状 140
 6 併存症 142
 7 経過と予後 142
  7.1 限局性恐怖症 142
  7.2 社交不安 142
  7.3 パニック症 143
  7.4 全般不安症 143
  7.5 強迫症 143
  7.6 心的外傷後ストレス障害 143
 8 治療 143
  8.1 限局性恐怖症の行動療法 144
  8.2 社交不安症の認知行動療法 144
  8.3 全般性不安症の認知行動療法 144
  8.4 パニック症の認知行動療法 144
  8.5 PTSDの治療 145
  8.6 複雑性PTSDの治療 145
第6章 摂食障害  149
 1 概念・定義(および歴史的背景)・症状 150
  1.1 神経性やせ症/神経性無食欲症 150
  1.2 神経性過食症/神経性大食症 154
  1.3 その他の摂食障害 157
 2 疫学 158
  2.1 神経性やせ症/神経性無食欲症 158
  2.2 神経性過食症/神経性大食症 158
  2.3 その他の摂食障害 159
 3 成因と機序 159
  3.1 神経性やせ症/神経性無食欲症 159
  3.2 神経性過食症/神経性大食症 161
  3.3 その他の摂食障害 161
 4 経過と予後 162
  4.1 神経性やせ症 162
  4.2 神経性過食症/神経性大食症 162
  4.3 その他の摂食障害 162
 5 治療 162
  5.1 神経性やせ症 162
 5.2 神経性過食症/神経性大食症 164
 5.3 その他の摂食障害 166
第7章 物質使用障害 169
 1 物質使用障害とは 170
 2 物質使用障害にみられる依存症状 170
  2.1 物質使用障害の多側面 172
  2.2 物質関連の医療社会的コスト 174
 3 診断基準 175
  3.1 DSMの診断基準 175
  3.2 ICD -10による診断基準 175
 4 疫学 178
  4.1 日本 178
  4.2 世界 179
 5 対象となる物質とその症状 180
  5.1 非違法(流通)物質 180
  5.2 違法物質 182
 6 代表的な物質使用障害の特徴 182
  6.1 アルコール使用障害 182
  6.2 覚醒剤等の使用障害 189
  6.3 いわゆる危険ドラッグ 190
  6.4 (治療薬による)医原性依存 処方薬依存症 191
 7 社会的対策 192
  7.1 法的規制と現状 192
  7.2 海外の状況 192
 8 まとめ 193
第8章 パーソナリティ障害 195
 1 はじめに 196
 2 パーソナリティ障害の歴史的変遷 196
 3 診断とアセスメント 197
  3.1 境界性パーソナリティ障害 198
  3.2 自己愛性パーソナリティ障害 200
  3.3 その他のパーソナリティ障害 203
 4 パーソナリティ障害の
  精神療法的接近    211
  4.1 精神病理 211
  4.2 精神療法的接近の基本技能 212
  4.3 精神療法的接近のポイント 215
  4.4 困難な状況 218
第9章 睡眠・覚醒障害 223
 1 正常な睡眠とその変動 224
  1.1 睡眠と発達・加齢の影響 224
  1.2 睡眠の性差 224
  1.3 環境要因と睡眠 224
 2 不眠障害 226
  2.1 臨床的特徴 226
  2.2 検査所見 227
  2.3 治療 228
 3 過眠障害 230
  3.1 臨床的特徴 230
  3.2 検査所見 230
  3.3 治療 230
 4 ナルコレプシー 230
  4.1 臨床的特徴 230
  4.2 検査所見 232
  4.3 治療 232
 5 呼吸関連睡眠障害 232
  5.1 閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸 232
 5.2 中枢性睡眠時無呼吸 234
 6 概日リズム睡眠-覚醒障害群 236
  6.1 睡眠相後退型 236
  6.2 睡眠相前進型 238
  6.3 不規則睡眠-覚醒型 238
  6.4 非24時間睡眠-覚醒型 239
  6.5 交代勤務型 239
 7 睡眠時随伴症群 240
  7.1 ノンレム睡眠からの覚醒障害 240
  7.2 悪夢障害 242
  7.3 レム睡眠行動障害 243
  7.4 レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群) 245
 8 物質・医薬品誘発性睡眠障害 247
  8.1 臨床的特徴 247
  8.2 検査所見 247
第10章 認知症  251  
 1 認知症総論 252
  1.1 認知症の定義 252
  1.2 認知症の疫学 256
  1.3 認知症を呈する主な疾患 256
  1.4 認知症の症状 257
  1.5 診断・検査 262
  1.6 軽度認知障害 264
 2 認知症各論 265
  2.1 アルツハイマー型認知症 265
  2.2 血管性認知症 269
  2.3 レビー小体型認知症 272
  2.4 前頭側頭葉変性症 276
  2.5 その他の認知症 278
第11章 神経発達症   281
 1 はじめに 282
  1.1 知的能力障害群 284
  1.2 自閉スペクトラム症 288
  1.3 注意欠如・多動症 292
  1.4 限局性学習症 296
  1.5 コミュニケーション症群 298
  1.6 運動症群 301
 2 症例提示 304
 3 終わりに 307
第12章 身体症状症と総合病院 精神医学  311
 1 身体症状症の定義と概要 312
  1.1 身体症状症 313
  1.2 病気不安症 314
  1.3 変換症(または転換性障害、機能性神経症状症) 316
  1.4 作為症(または虚偽性障害) 317
  1.5 他の医学的疾患に 影響する心理的要因 319
  1.6 基本的対応と治療 320
 2 コンサルテーション・リエゾン精神医学の定義と概念 325
  2.1 歴史 326
  2.2 コンサルテーション精神 医学における介入の実際 327
  2.3 リエゾン精神医学における介入の実際 328
  2.4 法的・倫理的な問題 329
3 症状性を含む器質性精神障害 331
  3.1 定義           331
  3.2 病態 331
  3.3 治療・ケアにおける注意点 333
 4 せん妄 333
  4.1 定義 333
  4.2 症状 334
  4.3 原因 334
  4.4 予防、治療とケア 334
 5 緩和医療 336
  5.1 緩和ケア、サイコオンコロジーの定義 336
  5.2 がん患者における精神症状 337
  5.3 終末期医療における治療目標の設定 339
第13章 てんかん    343
 1 はじめに   344
 2 病態   344
  2.1 てんかんの定義  344
  2.2 疫学  344
  2.3 予後 345
  2.4 原因 345
  2.5 てんかんまたはてんかん症候群の分類 346
  2.6 発作症候 349
  2.7 てんかんの診断 349
 3 てんかんの検査 350
  3.1 脳波検査 350
  3.2 脳磁図検査 351
  3.3 神経画像検査 352
  3.4 血液生化学検査 352
  3.5 髄液検査 353
  3.6 神経心理検査 353
 4 てんかんの治療 354
  4.1 内科的治療 354
  4.2 外科治療 356
 5 てんかんの包括治療 360
  5.1 てんかんと作業・理学療法 362
 6 てんかんと社会 362
  6.1 運転免許 362
  6.2 てんかん患者の受けられる医療支援制度 363
 7 おわりに 363
第14章 精神科薬物療法   365
 1 概念・定義 366
 2 向精神薬の分類 367
  2.1 抗精神病薬 367
  2.2 抗うつ薬 373
  2.3 気分安定薬 378
  2.4 抗不安薬 381
  2.5 睡眠薬 385
  2.6 薬物依存治療薬(アルコール依存治療薬、ニコチン依存治療薬) 388
  2.7 精神刺激薬 390
  2.8 抗認知症薬 393
  2.9 抗てんかん薬 395
第15章 精神科ハビリテーション  401
 1 概念・定義 402
  1.1 精神科リハビリテーションの歴史 402
  1.2 リハビリテーションでのモデル変化 402
 2 個人に対するリハビリテーションの介入と評価       405
  2.1 ベーシックな認知機能からの評価・介入 406
  2.2 活動レベルでのパフォーマンスを切り口とした評価・介入 409
  2.3 全般的な社会機能を切り口としたリハビリテーション 414
  2.4 環境(全体のシステムや取り組み)を切り口としたリハビリテーション 417
 3 まとめ 418
第16章 精神医療関連法規   423
 1 はじめに 424
 2 精神医療関連法規の歴史的変遷 424
 3 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 426
 4 隔離と身体拘束 431
 5 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療 及び観察等に関する法律 432
6 発達障害者支援法 433
第17章 国試問題と解説 437
1 統合失調症 438
 2 うつ病・双極性障害 439
 3 不安症・強迫症・心的外傷後ストレス障害 441
 4 摂食障害 443
 5 物質関連障害 444
 6 パーソナリティ障害 445
 7 認知症 447
 8 神経発達症 448
 9 てんかん 449
 10 治療技法・リハビリテーション技法 449
解答と解説  452
索 引  457



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