改訂新版 読んで学ぶ交通工学・交通計画

著者:編者:久保田尚/大口敬/髙橋勝美  著者:石神孝裕/稲原宏/井上紳一/加藤昌樹/小嶋文/佐野薫/須永大介/高砂子浩司/平見憲司/福本大輔
分野:工学一般
ページ数:294
判型:A5
ISBN:978-4-8446-0913-1
定価:本体 3,000円 + 税
 交通は、とても身近なものです。敷地の外を人や車などが移動することを「交通」と定義するならば、ほとんどの人が毎日のように交通を行っているはずです。仮に家を一歩も出ない日でも、宅配便が荷物を届けてくれたとしたら、宅配便業者による交通の恩恵を受けたことになります。宅配便が届かない日でも、表通りを通るトラックの騒音がうるさいと感じたら、交通からの影響を受けたことになります。
 このように、誰にとっても当たり前のような交通の世界なのですが、ひとたび、渋滞を解消しようとか、交通事故をなくそうとか、あるいは道路や鉄道の計画を立てようとかいったことを考えると、とたんに専門性のきわめて高い分野になります。本書が主に扱う道路交通に関しては、「交通工学」や「交通計画」という名前の講義が工学部の主に土木系の学科で講義されています。
 本書は、これから「交通工学」や「交通計画」を専門的に学ぼうとする学生に、「身近な交通」からの橋渡しをすることを目指して書かれました。ここで書いてあることを「読んで学んで」頂ければ、講義で学ぶことの意味や意義が理解できるように、入門的な内容をさらにかみ砕いて記述したつもりです。
 また、現今、交通分野が大きな変革を遂げつつあり、ICT の急激な進展に伴い、ビッグデータの活用など、交通調査の内容や手法がすでに大きく変貌しました。そのことはまた、交通計画自体の変革ももたらしています。交通工学の分野においても、平面交差点の計画設計手法や生活道路対策など、著しい進展が見られた分野がいくつも存在します。さらに、歩行者や自転車の扱いをはじめとする、「人中心」のみちづくりの方向性が完全に定着するに至っています。
 今回の改訂ではこれらを踏まえ、執筆陣に新たに若手に加わってもらい、世の中の動きに敏感に対応するように努めたつもりです。できるだけ多くの方にお読みいただき、ご批判を仰ぎたく思う次第です。
目次正誤表追加情報
1章 序章
 1.1 交通工学・交通計画の役割と本書の狙い
  1.1.1 わが国の交通の過去と現在
  1.1.2 本書の狙い
 1.2 わが国の交通

2章 交通の流れを円滑にする
 2.1 交通現象の捉え方
  2.1.1 基本特性の表す変数
  2.1.2 交通量,速度,交通密度
  2.1.3 待ち行列と遅れ
 2.2 交通渋滞
  2.2.1 ボトルネック
  2.2.2 衝撃波解析
  2.2.3 交通渋滞における需要超過割合
 2.3 道路の交通容量と交通渋滞対策
  2.3.1 単路部の交通容量
  2.3.2 その他の区間の交通容量
  2.3.3 ボトルネック交通容量と渋滞対策
 2.4 平面交差点の交通容量と制御
  2.4.1 平面交差点の種類
  2.4.2 ラウンドアバウト
  2.4.3 信号交差点の交通現象
  2.4.4 信号交差点の交通処理性能
  2.4.5 交差点信号制御の設計
 2.5 情報通信技術と交通運用
  2.5.1 ICT の進歩
  2.5.2 道路交通情報と交通マネジメント
  2.5.3 マルチモーダル交通サービス

3章 将来の交通需要を予測して計画を立てる
 3.1 交通計画の策定手順
  3.1.1 交通計画策定の考え方
  3.1.2 計画策定とPDCA サイクル
 3.2 将来予測のための交通調査
  3.2.1 交通実態調査・交通データの技術
  3.2.2 交通に関する統計調査
 3.3 交通需要予測の方法
  3.3.1 交通需要予測のための基礎知識
  3.3.2 交通行動をモデル化する
  3.3.3 人の動きを4つのステップに分けて予測する~四段階推計法
  3.3.4 四段階推計法の改善に向けて
  3.3.5 時々刻々と変化する交通状況をモデル化する~交通量推計手法の動学化
 3.4 これからの時代の交通計画
  3.4.1 人口減少時代の交通計画のあり方
  3.4.2 TDM/MM
  3.4.3 モーダルシフト
  3.4.4 交通シミュレーションを活用した交通計画の検討

4章 将来予測に基づいて道路を計画し設計する
 4.1 道路計画の基本
  4.1.1 道路の種類とネットワーク計画
  4.1.2 道路の種級区分─道路構造令
 4.2 将来交通需要予測と道路計画プロセス
  4.2.1 道路計画と設計基準交通量
  4.2.2 設計基準交通量と車線数決定プロセス
 4.3 計画の決定
  4.3.1 プランから計画へ
  4.3.2 都市計画とは
  4.3.3 都市施設としての道路計画の決定
  4.3.4 都市計画道路と私権制限
  4.3.5 都市計画道路の見直し
  4.3.6 交通計画と都市計画
 4.4 道路の設計
  4.4.1 道路の役割と機能
  4.4.2 道路設計の基礎
 4.5 歩行者・自転車等の空間設計
  4.5.1 歩道とバリアフリー
  4.5.2 自転車
  4.5.3 新しい乗り物(モビリティ)
 4.6 都市街路の設計

5章 道路交通を安全にする
 5.1 わが国の交通安全
  5.1.1 わが国の交通事故
  5.1.2 わが国の交通事故の特徴
 5.2 交通リスクの捉え方
  5.2.1 交通事故の偶発性
  5.2.2 ポアソン分布と指数分布
  5.2.3 交通安全対策の効果評価
  5.2.4 交通リスク分析に用いられるデータ
 5.3 人と車の共存─生活道路の交通安全対策と地区交通計画
  5.3.1 生活道路の現状
  5.3.2 近隣住区論
  5.3.3 ラドバーン方式
  5.3.4 ブキャナンレポート
  5.3.5 ボンエルフ─道路空間デザインへの関心
  5.3.6 交通静穏化とゾーン30
  5.3.7 日本の交通静穏化の取り組み
 5.4 交通事故ゼロへ向けた取り組み
  5.4.1 証拠に基づく科学的対策の推進
  5.4.2 情報通信技術の活用と自動運転
  5.4.3 人間工学・交通心理学

6章 まちづくりへの貢献
 6.1 まちづくりと交通
  6.1.1 まちづくりへの貢献─交通の新たな役割
  6.1.2 都心部の交通まちづくりのポイント
 6.2 交通シミュレーションと社会実験─交通まちづくりと合意形成
  6.2.1 合意形成のためのツール
  6.2.2 さいたま市氷川参道の取り組み
 6.3 開発に伴う交通への影響評価と対策
  6.3.1 都市の開発が交通に与える影響
  6.3.2 開発に伴う交通への影響評価
  6.3.3 交通影響評価に関する対策と課題
 6.4 歩行者・自転車を重視した交通体系
  6.4.1 歩行者について
  6.4.2 自転車について
 6.5 中心市街地の総合的な交通まちづくり
  6.5.1 なぜ中心市街地の交通まちづくりなのか
  6.5.2 パッケージアプローチによる交通まちづくり
  6.5.3 実現に向けた取り組み
 6.6 都市の構造と都市交通計画
  6.6.1 土地利用と都市交通の連携
  6.6.2 コンパクトな都市構造の形成
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