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エコロジカル・ランドスケープというデザイン手法

生物多様性に配慮した空間を総合的にデザインする50シート

書籍情報

著者 小川総一郎
ジャンル 土木
発行年月 2009年05月
ISBN ISBN978-4-8446-0745-8
価格 4,410円(本体価格 4,200円)

まえがき

われわれ人類は、地球上に生きる生物の一員として環境と共に生きざるを得ない。人が他の生物と共存して豊かな生活を送るためには、個人の努力以前に、生活している環境が健全で安全で魅力的でなければならない。われわれを取り巻く環境が崩壊すれば、まず人格が崩壊し、やがて人も地球上に存在できなくなる。そうなる前にわれわれにもできることがあるはずだ。

エコロジカル・ランドスケープというデザイン手法がある。これは、ひとりの技術者がエコシステムとエンジニアリングとデザインを同次元で考えることで初めて解決できる総合的な空間のデザイン手法のひとつだ。デザイン対象は、外部空間そのものだ。

エコシステムとは、健全な物質循環の相互関係のことをいう。自然が豊かな地域でも、装置化された都市空間でも、水や生き物を介在した物質循環や季節の変化が存在する。地域の環境を支えているエコシステムの仕組みを理解し、本来、地域があるべき姿を維持できるように人が手を加えるべきことに適切に対処すれば、自然が何万年もかけて創ってきたエコシステムを維持できる。逆に、ちょっとした自然への配慮が欠けると簡単にエコシステムを壊してしまう。すべての開発が自然を壊しているのではなく、エコシステムの存続や生物多様性を意識していない開発が自然を壊している。エコロジカル・ランドスケープは、開発を本来の環境に取り戻す機会でもあるととらえている。人が環境を利用している以上、環境に何も手をつけないでエコシステムを健全に維持することはできない。

エンジニアリングとは、人が自然環境を改変するときに、地域本来のエコシステムが機能するように手を加える技術のことであり、人の都合で地域のエコシステムに適合しない土地利用や構造物を無理やり地域に押し付けることではない。

デザインとは、健全なエコシステムと安全性の高いエンジニアリングをふまえて、空間を魅力的に演出することであり、作家として作品を作ることではない。本来そこにあるべき情景を現実の空間にすることだ。

エコロジカル・ランドスケープでは、常に地域の環境全体の中で目指すべき姿を考えて設計する。全体を視野に入れつつ設計対象を考える。全体を視野に入れなければ、現状の建築・土木・造園と同じ分業の設計になってしまう。

エコロジカル・ランドスケープは、けっしてパーツのデザインをしない。その環境でしか成しえない空間の創出を追求する。外部空間のオーダーメイドを行う。

パートナーは自然環境だ。

広域な空間をデザインするには、地域が目指す風景への哲学が必要だ。これから国土や風景づくりに携わる志を持つ人にとって、本書が一助となれば幸いです

もくじ

  • 1. エコロジカル・ランドスケープ事例 
  • パルタウン城西の杜:地下水と連動する調整池のある街並み
  • 水戸ニュータウン多自然型調整池:生物多様性を追求した多自然型調整池
  • Green Avenue あざぶの丘:切盛境の大木を生かした住宅団地
  • ヌーヴェルゴルフ倶楽部: エコシステムの活用で経費低減のゴルフ場
  • 2. 理念
  • 01 環境を総合的にデザインする
  • 02 人はエコシステムの一員
  • 03 エコロジカル・ランドスケープの目指すところ
  • 04 エコロジカル・ランドスケープの三要素と三原則
  • 05 原則1:地域環境の潜在能力を見きわめる
  • 06 原則2:人が手をつけてよいところといけないところを正しく認識する
  • 07 原則3:人が1/2 造り、残りの1/2 を自然に創ってもらう
  • 08 生物多様性を意識して空間を造る
  • 3. デザインプロセス
  • 09 VCSP プロセス:10 のデザインステップで考える
  • 3-1 ビジョン
  • 10 ステップ1:プログラミング・マトリックスで課題を発見する
  • 11 ステップ2:アイデアの適正さを早期に見定める
  • 3-2 コンセプト
  • 12 ステップ3:フロー作成して考える順番を確認する
  • 13 ステップ4:デザインに必要な情報を収集する
  • 14 ステップ5:ブレイン・ストーミングで将来像を共有する
  • 15 ステップ6:コンセプトをHOW で構築し、情景を設定する
  • 3-3 シナリオ
  • 16 ステップ7:コンテでデザインプロセスを分解する
  • 17 ステップ8:画コンテで情報を共有する
  • 18 ステップ9:エスキスで空間イメージを表現する
  • 3-4 プレゼンテーション
  • 19 ステップ10:デザインを伝え、信頼を得る
  • 4. デザイン手法
  • 4-1 環境情報をデザインに反映する手法
  • 20 環境情報を3D で表現する
  • 21 Web 情報を収集して環境テーマ図を作成する
  • 22 環境テーマ図から環境応用図を作成する
  • 23 環境要素を重ね合わせて環境を総合的に理解する
  • 4-2 エンジニアリングをデザインに関連付ける手法
  • 24 地形を自由にコントロールする
  • 25 地形と排水と植栽を同時に操作する
  • 26 群落単位で植生を考える
  • 27 水循環と安全で美しい雨水排水を考える
  • 4-3 デザイン感覚を磨く手法
  • 28 形ではなく情景を伝える
  • 29 文章からスケッチを描く
  • 30 スケッチから文章を書く
  • 31 写真の上にイメージを描く
  • 4-4 スケール感覚を磨く手法
  • 32 スケール感覚は相対的なものと考える
  • 33 どこで風景を切り取るか意識する
  • 34 ものの見え方の仕組みを理解する
  • 35 目の高さを意識してスケッチを描く
  • 36 条件からスケッチを描く
  • 37 スケッチ定規とスケッチシートでスケッチを描く
  • 38 スケッチから平面図に変換する
  • 4-5 デザイン資源をストックする手法
  • 39 見る、描く、コメントする
  • 40 偶然性と必然性に想像力を加える
  • 41 オリジナル・パタンを蓄える
  • 4-6 空間構成を演出する手法
  • 42 風景を分解し再構築する
  • 43 遠景・中景・近景の役割を考える
  • 44 シークエンスとストーリー展開を想定する
  • 45 特定視点場を設定する
  • 46 軸線(Line) のデザイン
  • 47 囲み(Enclosure) と開放性(Openness) のデザイン
  • 48 視距離とテクスチャを意識する
  • 4-7 デザインを表現する手法
  • 49 フリーハンドスケッチに慣れる
  • 50 透明水彩(Water Color) で情景を表現する
  • 引用・参考文献
  • 索引

正誤表

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追加情報


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