
■まえがき:
私たちは、都市やまちとの関わりの中で生きている。都市計画は、私たちにとって身近なテーマの一つである。例えば、駅前にデパートがあって欲しいものが買えるのも(市街地再開発事業による拠点整備)、騒音や振動の発生源となる工場が家の近くにないのも(用途地域指定による用途の混在の防止)都市計画のおかげである。地域の人々相互の結びつきの強いところでは、災害時の救援活動や復興のまちづくりも活発に行われる。まちなかでの子どもの犯罪被害の防止にも、まちづくり活動の果たす役割は大きい。まちづくりは、私たちの生活を支えている。私たちひとりひとりが、都市計画やまちづくりに対して関心をもつことで、都市での毎日の生活をより快適なものにすることができる。本書は、まちを歩く人の視線で都市計画を考えるテキストである。都市計画という、漠然としてイメージしにくいテーマを、できるだけわかりやすく整理し、「みんなの都市計画」のテキストとして編集した。具体的には、建築系、土木系、都市系、社会系などの大学や高専などで開講されている「都市計画」の講義で使用される教科書あるいは副読本として編纂されている。明快さ、わかりやすさを第一に据えて編集を行った。できるだけ簡潔にまとめることを心がけた。また、図版や事例を数多く使用し、実感として理解できる都市計画の本を目指した。取り上げたまちづくり事例は40を数える。理論は体験をベースに理解される。都市を歩いたり、まちで過ごした体験の少ない学生にとって、できるだけわかりやすい内容とするため、実際の都市空間やまちづくり活動がイメージできるように豊富な事例を盛り込んだ。全体は4部で構成されている。都市デザイン、まちづくり、都市計画制度、都市・都市計画史を取り扱っている。都市計画分野で中心をなすのは、都市計画制度である。しかし、まちの課題解決には、制度だけでは限界があるのも事実である。よりよい居住環境をつくるには、自治体と市民との協働が不可欠である。そのまちに住む市民として何ができるかを学ぶという意義のもとまちづくりの内容が盛り込まれている。まちの改善には制度を利用することが有効なケースもある。都市計画制度のアウトラインを理解しておくことは、専門家だけでなく市民にとっても必要不可欠なこととなろう。美しいまちをつくるに、個々の建物や構築物をどのように捉えればよいのかを論じたのが、「都市デザイン」である。美しいまちをつくるには、まちを構成するひとつひとつの建物のデザインが都市との関わりの中で練られなければならない。そのためには、施主すなわち市民が、自らが携わる建築に何が求められるのかを知る必要がある。建築家の問題であるが、建築家だけの問題ではない。歴史は最後に配置した。通常、都市計画の歴史に関する項目は、はじめに置かれることが多いが、本書ではあえて最後に置いた。デザイン、まちづくり、制度といった都市計画に関する内容を理解してからでないと、歴史を学ぶ意味はわかりにくい。歴史で扱う内容は、いまとは関係のない昔の話ではない。いまを知るには過去を知らなければならない。まちづくりのいまも都市計画のいまも、様々な過去の集積の結果である。また、世界各地の歴史都市は、単なる過去の遺物ではなく、私たちに都市の多くの可能性を教えてくれる。都市のかたちにいかに多様な選択肢が残されているかを歴史都市から学ぶことができる。そうしたスタンスで接してもらいたいがために、最後に配置した。都市計画の歴史を学ぶことで、より豊かな都市観が育まれることを期待する。執筆にあたっては、多くの先生方の書籍、論文、国や自治体等の資料を参考にさせていただいた。取り上げ方や解釈・理解の面で不十分な点があると思われる。ご叱正いただけると幸いである。引用させていただいた図・表・写真も数多い。掲載を承諾いただいた方々には感謝申し上げる次第である。(序文より)


