
技術士制度は,1957年(昭和32年)に発足して以来50年余が経過した.その間,種々の改訂が加えられてきたが,その主なものが,1983年(昭和58年)に技術士補を誕生させるとともに受験資格で学歴を不問にし,技術士にふさわしい業務経験が7年以上あれば誰でも受験できるようにしたこと,1992年(平成4年)に「建設環境」科目が追加されたことなどである.
このような経過の後,2000年(平成12年)には,大幅な改訂が行われることになった.その改訂の趣旨は次のようなものである.
a.試験制度を変更し,技術士になるための第二次試験の受験資格を,第一次試験の合格者とした(ただし日本技術者教育認定機構(JABEE)によって認定された教育課程の修了者は免除される)
b.必須となった第一次試験に,基礎的学識に関する「基礎科目」及び技術士等の義務遵守に関する「適正科目」を追加した
c.技術者資格の国際的相互承認への対応を図った
d.技術士等の公益確保の責務と技術士の資質向上の責務を加えた
e.総合技術監理部門を追加した
このような改訂によって,教養豊かで倫理観の強い専門技術者が輩出することを期待するともに,これらの技術士が国際的な舞台で活躍出来るような素地を作ったのである.
一方,技術士の英語表記を,従来の「コンサルティングエンジニア」から「プロフェッショナルエンジニア」に変更した.このことは,技術士に対して,その社会的責任と名誉をさらに深く自覚することが要請されているということを意味しているのである.技術士法では技術士の名称独占使用が保障されているだけであって,その他の特権は与えられていないが,技術士は,国で認められた高等な専門技術者としての名誉のもとで,社会的貢献を果たすべき人格と知識が要求されているのである.
したがって,技術士のための第二次試験では,第一次試験による基礎的知識及び広い教養と倫理観の確認の上で,科学技術に関する高等の専門的応用能力を有するかどうかを審査するのである.そこで専門技術に関しては,その実務的応用能力を重点的に試験するための「科目別専門技術」の試験と,それらの技術を社会にどのように適用しようとしているかという技術哲学・理念に関する「建設一般」の試験とが課されることになる.
技術士試験に臨もうとしている受験者は,知識偏重の受験準備をしていていたのでは成功しない.少なくとも人間社会にあって有益な働きをするために欠かせない技術哲学と,専門科目に関する技術の基本原理をベースにした応用能力を発揮するための全技術体系を,確実に自分のものにするような準備が必要である.
そこで受験を目指す諸兄姉には,この機会に,本テキストを参考にして,自らの技術を再検討し,人間社会に生きる技術者として明確な自覚を確立することを望みたい.そのようにして人格的にも技術的にも信頼される技術士が多く誕生することを執筆者一同願っている.


