
| 著者 | 小林茂雄/東京都市大学小林研究室編著 |
| ジャンル | 芸術 |
| 発行年月 | 2009年04月 |
| ISBN | ISBN978-4-8446-0741-0 |
| 価格 | 2,625円(本体価格 2,500円) |

街に対する落書きは、現在大きな社会問題となっている。1990年代に入って建物の壁やシャッター、高架下の大きな壁面にスプレー塗料を用いた様々な描写が増殖するようになった。許可を得ずに描かれるため、もちろん犯罪である。それらは単に所有者に迷惑をかけたり景観を汚したりするという問題があるだけでなく、他の落書きを呼び、徐々に治安を悪化させ、街がすさんでいくきっかけを与える。落書きを見逃すことは、人々の街に対する無関心さを助長することにもなるのだ。
しかし一方で、グラフィティなどの落書きの中にはアートとしての側面があるのも事実である。描写力の高い絵を見ると、感心したり興味を覚えたりすることがある。また、街を歩いているときに何気ない落書きに出会うと、クスッとしたり、ほっとしたり、肩の力が抜けたりすることがある。息の詰まるような閉塞的な社会の中で、ちょっとしたイタズラ書きや子供の落書きは、その少しばかり挑戦的な行動と伴って、ほほえましく感じさせる力を持っている。
街の中には様々な絵が描かれている。質が高いものもあれば低いものも、面白いものもそうでないものもある。合法なものも違法なものもある。違法な落書きは街から即座に排除していかなければならないが、単純にそうしようとしただけでは、落書きやグラフィティの中にある、替え難い魅力まで失われてしまうのではないだろうか。
本書は、街に描かれる絵について、合法なものも違法なものもひっくるめて、街に対する価値を改めて検討しようとしている。街に対して描かれる絵は、ギャラリーなど閉鎖された場所に展示される絵とは異なり、公共的な意味合いを持っているものだ。いくら個人的な動機によってなされるものであっても、最終的には、その街に住む人々や訪れる人にとって価値があるものでなければならない。そういう視点で、もう一度街の絵を見直してみようとした。絵の力で、街をもっと面白く、魅力的なものにする方法はないだろうか。


