
推薦:ニュースの職人 鳥越俊太郎 食べものを作る人も、食する人も全ての人に読んで頂きたい本です。
2007年の初めに起きた不二家の消費期限切れ原料の使用問題から始まり、ミートホープの原料食肉偽装、石屋製菓の菓子の賞味期限改ざん、船場吉兆の賞味期限改ざんや食肉産地偽装、日本マグドナルドの賞味期限切れ原料の使用等と、立て続けに起こった食品表示の違反事件は、日頃安心して食べていた食品の表示内容や経営者の姿勢に大きな問題があることが明らかになりました。
(社)日本技術士会の食品関連部会に所属する私は、これらの違反事件のどこに問題があり、今後何を変えていく必要があるのか、きちんと整理・総括したいと思い、既に公表された情報を基に、事件の経緯を詳しく調査しました。その結果次のような問題点が浮かび上がりました。
一つ目はこういう表示違反事件が起きたのは、食品事業者自身に表示に関する法令の理解が不十分であったからですが、同時に、その背景には食品衛生法(厚生労働省)、JAS法(農林水産省)、景品表示法(公正取引委員会)等異なる省庁の食品関連法令が錯綜しており、法令の体系自体にも問題があるのではという疑問を感じました。最近では「消費者庁」の設置の是非や食品関連法令の一本化の話題が聞かれますが、法令の実態を良く理解する必要があります。
二つ目はこれらの不祥事はいずれも食中毒とか健康被害を起こしていないのに、世間を騒がせ、食に対する消費者の信頼を失う事態になったのは一体何故なのかと言う素朴な疑問でした。特に問題になったのは賞味期限という期限の表示が必ずしも「もう食べられないもの」ではないことから来る言葉の定義に曖昧さがあると言うことです。あれほど騒がれた不二家の事件が食品衛生法では違反とされたものの営業停止の行政処分はなされず、農林水産省の法令違反でも厳重注意処分で済みました。その理由は健康被害が起きていないからという事でした。どこまでが許されて、どこからが許されないのか。きちんとした線引きがないと事業関係者には迷いが生じます。
三つ目はミートホープ社の牛肉ミンチの品質表示偽装事件や、船場吉兆の賞味期限改ざんと食肉産地偽装事件に見られるように、ウソをついてまで会社の利益を得ようとする利己的な考えを持った事業経営者が後をたたないことです。こういう経営者のいわばモラルの喪失は食品業界だけに止まらず広く日本の産業界全体に共通した現象ですが、一体どうしたら真に信頼し合える社会が築けるのか、そのためにはどういう哲学や考え方があるのかと言う問いかけでした。
(はじめにより)


